製薬業界を舞台に組織の冷酷さを描いた高杉良さんの『明日はわが身』を一気に読みました。
大手製薬会社の若手エリート社員が、派閥抗争に巻き込まれ、営業部門のプロパーへと左遷されます。そして営業先の医師の横暴さや、患者を軽視するゆがんだ医療現場を目の当たりにします。ついには、激務から健康を害してしまい休職を余儀なくされ、会社が冷たく退職を促すという組織の非情さを描いています。
この小説は、高杉良さんが1977年に発表した二作目で、当時、製薬会社の営業担当と位置付けられていたプロパーさんは、医師に対する過剰接待が問題となり、その後MRと名称を変更、専門性を持つ仕事として資格試験を行うようになっています。しかし、その立場がどの程度改善されているのかは、わかりませんが…。
ところで、この作品で主人公は輸血が原因の血清肝炎となりますが、高杉さん自身も患った急性肝炎の経験をもとに書かれています。銀行などの大組織ならば、大病すると同期のトップグループからは確実に外され、患者仲間には会社を辞めざる得なくなった人も…入院中は、まさに明日はわが身ということをかなり考えたといいます。
昔は終身雇用がちゃんと守られ、まだどこかサラリーマンにも余裕がありましたが、若いワラリーマンを見ていても、働きすぎで、傍目から見ていても「大丈夫かな」と思うと高杉さんはいいます。
「サラリーマン受難の時代ですが、なんとか皆さんを維持してがんばっていただきたいですね。」と巻末インタビューでサラリーマンへのエールを送っています。
30年たった作品ですが、そのリアリティがなおさら感じられる高杉さんの本質を描き出す力に、心動かされました。
『明日はわが身』(07年新潮文庫)巻末付録・著者インタビュー「その頃の“わが身”」も収録