安全運転できる外国人ドライバー育てる動き進む 人材発掘先はカンボジア?

2025/11/12 (水) 16:30

物流業界は、労働環境の変化で人材不足が深刻化し、2030年には日本全国の約35%の荷物が運べなくなるとも言われています。こうした中、外国人のドライバーを育成し就職先までサポートするという取り組みを福岡県内の企業が行っています。その現場を取材しました。

大野城市の南福岡自動車学校に登校してきた2人。カンボジア出身のホール・ヴィリャックさん(38)とスオン・キゴウンさん(27)です。2人は、ある仕事に就くために2025年7月にカンボジアからやってきました。

指導員
「右に止まることなく90度向きを変えてください」
キゴウンさん
「はい」

トラックドライバーです。日本での運転教習が始まってから約1カ月、教習も最終版で、この日は難しいとされている直角カーブやS字クランクの練習を行っていました。

指導員
「S字バッチリでしたよ。ブレーキは最後もうちょっと優しい方が運転も良くなりますね」

キゴウンさんはカンボジアで車の整備工場に勤務。大好きな日本車を運転する仕事がしたいと来日を決めました。

スオン・キゴウンさん
「交通ルールを精いっぱい学んで、しっかり守って頑張ります」

ヴィリャックさんは日本の会社に就職し、カンボジアにいる妻と子どもの生活を安定させようと日々教習を受けています。 

ホール・ヴィリャックさん
「自分の家族のために頑張ります。日本のトラックの技術はいいところがいっぱいあり、チャレンジしたいです」

2人が日本でドライバーとして働けるよう後押ししているのが、自動車学校などを運営するミナミホールディングス。在留資格の特定技能に運送業が追加されたのをきっかけに、外国人ドライバーの育成や物流会社などへのあっせんを行っています。

ミナミホールディングス 小林良介執行役員
「元々自動車学校事業がメインで、ノウハウをうまく使いたいと思っていました。発展途上国では免許の取得率がすごく低く、我々の経験を求めている国があります」

この会社は、日本で働こうという人材の発掘先としてカンボジアに注目しています。

「カンボジアの道路交通法が日本の支援で作られているのでかなり似ています。安全運転教育するのにカンボジアはやりやすいのでないかと思い決めました」

8年前、首都プノンペンに自動車学校を設立。生徒はそこで日本語や日本の道路交通法を学び、240時間の運転カリキュラムを受け、試験に通って初めて日本に渡航します。さらにこの会社はビザの取得や日本での就労も全面サポート。こうした徹底した教育が求められるのは、ある理由で外国人ドライバーの事故が多いためです。

「外免切り替えで取っている今の外国人たちは、免許を取るための勉強しかしていないので事故が増えていると考えます」

外国で取った運転免許を日本の運転免許に切り替える外免切替免許取得者の推移です。年々増加傾向で、10年前に比べて2倍以上になっています。一方、外国人運転手による死亡・重傷事故は年々増加。全体の死亡・重傷事故に占める外国人の割合も増加しています。

「国民性に合わせた教育や、ルール・マナーの日本との違いをどう伝えるかだと思っています」

熊本県宇城市の運送会社です。トラックドライバーとして働くため、日本に来たホール・ヴィリャックさんとスオン・キゴウンさんは10月にこちらの会社に就職しました。

キゴウンさん
「仕事の関係や運転が少しずつ上手になるように毎日頑張っています」

アップライン 田中一成社長
「日本は慣れましたか?」
ヴィリャックさん
「だんだん慣れています。九州弁がちょっと…」

2人は現在、指導員に同乗してもらいながら熊本県内を走行している段階です。この日ヴィリャックさんは、道幅の狭い道路での運転練習を行っていました。対向車に接触しないように注意しながら慎重に進みます。

上司
「ブレーキ。離合する(狭い道で車がすれ違う)時にはゆっくり行ってくださいね」

ヴィリャックさん
「道の幅が狭いところはちょっと緊張します」
Q.対向車とすれ違う時はどういった工夫をしますか
「行けない時は止まります」
 
一方、キゴウンさんの運転練習。カンボジアでは、車両の優先関係に従わず、飛び出してくる車やバイクが多いため、交差点では速度を落としながら走行します。しかし、日本での減速は後続車からの追突される危険があり、こうした文化の違いを伝える教育が行われています。

キゴウンさん
「ずっとカンボジアで運転していたので、気をつけないと癖が出ます」

2人は今後、荷物の搬入や搬出といった作業も練習し、運送ドライバーとしての本格的な活動を目指します。

ミナミホールディングス 小林執行役員
「まず成功事例をつくることが先です。自社で送り出すドライバーを年間750人を目標にして、カンボジアだけでなく違う国も含めて動いています」

外国人ドライバーを育成し、就労先まで紹介するという取り組み。人手不足が深刻化する物流業界の問題解決の大きな一歩となるのか注目されます。

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