天神の老舗そば屋「みすゞ庵」 73年の歴史に幕

2025/12/22 (月) 16:30

12月20日、福岡市天神で73年続いたおそば屋さんが、多くの人に惜しまれながら閉店しました。そこでは街のそば屋と客たちのふれあいを垣間見ることができました。


「お母さん、握手お願いしてもいいですか?ありがとうございました。風邪ひかないように」
みすゞ庵 小籏三保子社長
「お気遣いありがとうございます。お元気で」

20日、天神の中心地に店を構える老舗そば屋「みすゞ庵」が営業最終日を迎えました。午前11時の開店を前に、店には長蛇の列が。


「学生の頃から来てました。知ってるお店が減っていくのは寂しいです」
「私が好きなのはだしの味。スープの味が忘れられません」

創業は1952年。当時は2階建てという店構えでしたが、1994年からはベスト電器福岡本店と共同でビルを所有し、営業を続けてきました。レジで計算を取り仕切る女性。社長の小籏三保子さん(87)です。前の社長で夫の小籏満さんが7年前に他界し、その後、彼女が店を切り盛りしてきました。

小籏三保子社長
『「(夫に)僕が死んだら辞めていいよ」と言われていました。(店が)愛されて惜しまれて。夫の死後、7年続けたから満足してくれていると思います』

店の人気メニューは「カツカレーそば」。もともとメニューにあった「カレー南蛮そば」の鶏肉をトンカツに変えてほしいという常連客からの要望で生まれました。カレーとだしが合わさった汁の上に、大きなカツが乗ったボリューム満点の一品。訪れた客のおなかを満たします。


「閉店後、どこで飯食っていいか分からないですよ。ごちそうさまでした」

閉店を惜しむ常連客らが従業員に声を掛け、店を後にします。みすゞ庵のだしに使われるサバ節などを長年納めてきたという仕入れ先の女性です。

仕入れ先の担当者
「注文の電話の声が聞こえなくなると思うと寂しくなりました。私たち小さな削り節屋を信じて使ってくれて感謝しかありません」

そして午後3時、用意したそば400杯とどんぶり150杯が売り切れました。

まもなく閉店。伝統の味を先代の父から受け継いだ、店長の小籏直幸さん(42)。最後の日でしたが、こんなことを口にしました。

小籏直幸店長
「普通の一日が終わったのかなくらいにしか。この時期、普段だったら年越しそば売りとかを計画して慌て出さなければいけませんでしたが、それもないので。年末頃からじわじわ実感がわいてくるんじゃないかなと思います」

そして閉店の瞬間を迎えました。

小籏三保子社長
「みんなのおかげでやってこれました。本当に感謝してます」

戦後、天神の街で愛され続けたそば屋。73年の歴史に幕を閉じ、その味は客の記憶に残り続けます。

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