採用試験の倍率低下続く北九州市 進める人材確保策は

2025/05/01 (木) 16:30

少子化や人手不足の中、大手企業が初任給を大幅に上げるなど人材の獲得競争が続いています。こうした中、北九州市職員の採用試験は受験倍率が下がり続けているんです。

北九州市は職員採用についてある危機感から若者の引き留めへ本格的に動き出しました。

北九州市 武内和久市長
「街を支えていくことを志してくださる次の世代がいなければ街は持続可能にならないということで、この人材確保困難という、静かなる有事にしっかり対応していかなければいけないという強い危機感を持っています」

危機感の背景にあるのは、北九州市職員の受験倍率の大幅な低下です。この10年で3分の1になりました。

北九州市人事課人財戦略担当 塩沢亮介課長
「(受験倍率が)3分の1は結構大きな数字なのかなという風に思ってますし、ここ数年もやっぱり少し下落傾向ということにありますので」

採用したい若者の多くは、関東や関西に流れる傾向があります。そのため、市では2025年から建築など技術職の試験のルールを変え、大学3年生、20歳での受験を始めました。企業の動きを意識し、3年生の8月に内定を出すようにしたのです。これまで若い人材が流出してきた北九州市。調査では、20代、30代はここ数年、2000人前後が毎年転出していて、関東や関西の企業などに採用されたとみられています。

北九州市人事課人財戦略担当 塩沢亮介課長
「たくさんの人が市役所を受験したいと思う環境作りってのがこれから必要になってくる」

こちらは、2024年発足した北九州市の「Z世代課」。地元からの流出が続く若者の引き留めなどに力を入れることが狙いです。若い人に少しでも市役所を身近に感じてもらおうと平均年齢28歳の若い世代で構成されています。

Z世代課の職員
「わかりやすく身近なことを若い人たちの目線で、若い人たちと一緒にたくさん話しながら考えられる」

このZ世代課が2024年10月、市内の若者が考えた企画を事業化させる取り組みを実施しました。20歳から28歳までの若い市民7人が企画を提出。若者が思い描く新しい地元発の産業を、イメージから現実のものにしました。

上野園芸社 上野烈さん
「北九州市でコーヒー豆を作る人はまだ誰もいない。生産量が増えれば全国まだどこにもない国産コーヒー豆という名産品が1個増える。これやってみたくないですか」

この企画は、小倉南区の住宅街の中にある農場でコーヒーを栽培して、北九州のコーヒー豆を名物の一つにしようというもの。北九州に向いている理由は消費地に近い点だといいます。

上野園芸社 上野烈さん
「これがコーヒーの実で、もともと苗で来た時についていたがその時はまだ緑どんどん赤くなってきた」

事業は、上野さんが300万円の補助金を申請し苗を購入。コーヒー畑は2025年3月に完成しました。2年後には、年間約50キロのコーヒー豆ができる予定で、企画では、コーヒー栽培に地域の農家を巻き込み新たな地元農業にしたいと意気込みます。

種苗家 上野烈さん
「周りの農家に知ってもらい面白そうだと共感してもらって生産量を増やしたい」

北九州市Z世代課 柏木佳奈子課長
「Z世代に学ぶことを大事にしているので、これからもっと市内の企業や市民とZ世代に触れ合う接点を増やすことをどんどんやりたい」

こうしたやりがいづくりと合わせ、北九州市が進めているのがワークライフバランスの充実です。デジタル技術を使って業務の効率化などを進めている堀江さんです。堀江さんは、4月、週休3日制度を利用しました。この日を休みにして、趣味の時間をたっぷり取ります。やりがいと同様に必要なのは、仕事と私生活を充実させるワークライフバランス。週に最低38時間45分勤務することなどを条件に、北九州市では、2025年1月から土日以外に平日も休みを取得できるようになりました。

北九州市DX・AI戦略室 堀江吏将担当部長
「うちの職場の中でも後に続いて休みを取ってみようとか時間ずらしてみようという人が増えたら、すごいみんな楽しく仕事ができるのでないかなと思う」

政令市で初めての試み。まだ取得する人は少ないと言いますが・・

北九州市給与課 大和武志さん
「介護や育児なども含めて柔軟な働き方をしたいという声が上がっていたので、利用者からはとてもありがたいという声を聞いている」

北九州市が人材採用に向けあの手この手に取り組む中、見えてきたのは地元企業も進めるべき働く環境づくりです。北九州商工会議所が調査した市内企業の大卒の初任給は約21万円。東証プライム上場企業の平均より約3万円低くなっています。地域の課題解決には行政と地元企業の連携強化が必要と言えます。

北九州市立大学 畔津憲司教授
「(北九州市は)全産業の人材不足を解消するという公的な役割も担わなければならないので、市の仕事の魅力を伝えると同時に、今後は各企業の仕事の魅力を伝えられるような、催しを今後検討していく必要がある」

若い人材の流出が続く北九州市。働く場さえあればいいという意識から、やりがいやワークライフバランスを重視する意識への改革が求められています。

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