不登校生徒を救う「三井中央高校」2025年度で閉校へ

2025/11/05 (水) 16:30

久留米市にあり、全国で3校しかない組合式という運営方式の公立高校・三井中央高校が来年3月に閉校します。少子化のなか生徒数を確保するためにこれまで不登校の生徒に寄り添ってきた教育現場を取材しました。

久留米市の西部に位置する北野町。ここに市内唯一の公立女子高・三井中央高校があります。

「おはよう〜。着てこいちゃんと〜」

3年生の学校生活は残り半年。進路に向け重要な時期を迎えています。

三井中央高校 大山明校長
「ここが2年の教室です」

2年生の教室に生徒の姿はありません。

「来年の3月に本校は閉校になります。今は3年生しかいないです。寂しいですが空っぽです」

三井中央高校は全国で3校しかない「組合式」の高校。複数の自治体で共同運営しており、この高校の運営費は久留米市・朝倉市・小郡市・大刀洗町が負担しています。

「(Qなぜ閉校になるのですか)どうしても、この少子化の波に押されたっていうのが一番の原因かなと思っています」

大山校長が赴任した8年前、新入生の定員120人に対し生徒数は65人。どうすれば進路として選んでもらえるのか悩んだと言います。

「不登校の生徒がたくさんいます。中学校でつまづいたけれども高校にいったらしっかり進路も決めて卒業させる、そういう学校を目指しました」

教員
「テスト14をやってください。今から自習にします。何分からにする?」

国語の授業中。小テストに向け生徒に自習時間を与えます。すると先生は。教室を出ていき、訪れたのは別の教室。

「リモートで(授業を)受けている生徒がいます。授業を受けられるようにサポートするために別室でしています」

学校には来たものの気持ちの問題で教室に入れない生徒向けにパソコンを用意しリモートで授業をしています。

リモートで授業を受けた生徒
「私自身病院にも通っていて、いろいろな人の声を聞くと授業に集中できなくてクラスにいるのがしんどいです」

これまで学校では生徒の事情にできる限り寄り添ってきたといいます。

「目いっぱいサポートしてくれて、この学校に入学してよかったと思います」

大刀洗町から高校に通う原本若奈さん。彼女は不登校を経験しています。

原本さん
「いじめとかもないのに(学校に)行けない自分が本当に嫌いでした。元々この高校に行く気はなくて、友達が一緒に行ってみない?と誘ってくれました」

(原本さん)「え、先生、これを書くと?」
(先生)「もっと詳しく書いた方がいいね」

学校に来られるようになったのは、親身な先生の存在があったからだといいます。

教員
「きつい。原因が分からない。それを(正直に)言いなさい。きょうは帰っていいから、あしたはどうするんだ?約束をして、あとは来るか来ないか。そのパターン多いね?」

大山明校長
「同じ悩みを持った生徒同士がお互いを励まし合うような感じ。それで生徒たちが元気になり、中学の先生が本当にびっくりします」

学校一丸で「救いの高校」を目指した三井中央高校。生徒数は増えたものの定員には届かず閉校が決まったのです。

大山明校長
「学校がなくなることは決して君たちの責任ではないと言いました。けっこうきつかったですね、自分自身が。必ずこの学校を卒業してよかったです。あなたたちを支えていくと話をしました」

高校の近くで開催され毎年3万人が訪れるというコスモスフェスティバル。会場にはイベント準備に追われる生徒たちの姿がありました。

生徒
「もったいないけどテープ使ってビーってして、そっちの方がいいと思う〜。いいよね」

この運営を手伝うのが三井中央高校の伝統です。こちらは彼女たちが家庭科の授業で手作りした子ども向けブース「ちびっ子ランド」。今年で最後。生徒が思いを込めたちびっ子ランドは大盛況です。

大山校長
「保育のコースもある。地域の場で実践としてやる。生徒もいきいきしている」

学校生活を通じ地域に貢献する。それを生徒が実感できる大切な授業です。会場には、不登校を経験した原本さんの姿が。ロールケーキなど地元のお菓子を販売します。

原本さん
「私みたいな似たような経験する子もいっぱいいると思う。その子たちにとって最後の砦の三井中央高校だったので、なくなるのが本当に惜しいです」

娘が卒業生という保護者は。

保護者
「(卒業した娘が)中学校でうまくなじめないところがあった。先生と生徒との距離感がすごくいいなと思って。この学校なくしてはうちの娘たちはなかったです」

イベントのラストを飾るのは3年生の生徒たちです。

生徒
「文化祭の時に歌った曲を歌います。寂しいけどこういう経験はなかなかできないことだと思います」
生徒
「みんなで今まで練習してきて、三井中央3年生だけでも一致団結できるという思いを伝えたいです」

大山校長
「本当に残念ですが、これだけ地域の人に支えられて、生徒も一緒に成長できて、非常にありがたい。感謝しかないです」

原本さん
「感謝を伝えられたかなと思うのと、正解に向かって進んでいきたいなという気持ちがあるので、頑張ります!」

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