進まない高齢ドライバーの免許返納…制度に問題は？｜ニュース｜テレQ

進まない高齢ドライバーの免許返納…制度に問題は？

2025/06/18 (水) 16:30

記者
「事故の現場は踏切の目の前で横転した車、そして店の窓ガラスが割れています。現在警察による鑑識活動が行われています」

５月、筑紫野市で下校中の小学生の列に車が突っ込んだ事故。運転していたのは７４歳の女性でした。６月、福岡市では９２歳の男が歩行者の女性をはね死亡させる過失運転致死事件が発生。さらに、長野県では９９歳の男性が高速道路を逆走。別の車と正面衝突する事故が起きています。

県警によりますと、２０２５年５月末までに福岡県内で発生した交通事故のうち３割以上にあたる、２５２３件が高齢者によるものです。

記者
「Ｑ.趣味は何ですか？」

浦芳信さん
「今はソフトボールとパチンコが楽しみです」

久留米市に住む、浦芳信さん、８４歳。子どもたちは独立し今は妻と二人で暮らしています。運転が好きで、数年前までは九州各地を車で旅行していました。妻を病院に連れて行く際など生活に車は欠かせません。

記者
「Ｑ.車がないと生活できない」

浦芳信さん
「ひと月に８００キロぐらいは乗ります。前は年間１万キロ以上乗っていました」

この日訪れたのは、自宅から車で２０分の道の駅。毎日食べる野菜を購入します。

記者
「大きいですね」

浦芳信さん
「キャベツがだいぶ安くなりました」

７０歳を過ぎてから娘からは会うたびに免許返納を勧められています。

「（娘から）免許証を早く返しなさいとずっと言われます。タクシーで動けばいいと。安全に乗っているから、待ってほしいと言っています。免許更新でダメと言われたらすぐに（運転は）止めようと思っています」

久留米市にある自動車学校です。集まったのは次の免許更新までに７５歳を超える高齢者。７５歳以上で免許を更新するには、定められた検査のクリアが必要です。最も重要なのが、記憶力や判断力を測定する「認知機能検査」。「認知症の恐れ」があるかどうかチェックするのです。

教習所職員
「刀、これはアコーディオン、これは足、これはテレビです」

複数のイラストを見て一旦記憶します。続いて別の課題を挟んだあとで、先ほどのイラストを思いだして書きだします。不合格になると認知症のおそれがあると判断され
医師の診断が必要になります。

参加者（７５）
「焦ってしまいます。日頃から物覚えが悪く、どこにモノを置いたか忘れてしまうことがあります。認知症が始まっていると思います」

ところがこの認知機能検査、実は合格ラインは１００点満点中のわずか３６点。こちらの自動車学校では２０２４年、検査を受けた高齢ドライバー２６４０人のうち不合格で再検査となったのは６５人。「認知症」と診断され免許返納に至ったのはわずか５人でした。免許更新のハードルはとても低いといえます。また、交通違反がない高齢者には「運転能力」の検査は実施されません。

教習所職員
「あ～信号は～？」

高齢者
「あららごめんなさい。信号があった。減点やね」

教習所職員
「試験ならね」

注意喚起のための講習を受けるだけ。この日も参加した１１人全員が合格しました。

久留米第一自動車学校　東三津明校長
（Ｑ.もっと厳しくするべきかどうか）
「それはちょっと難しいです。車の免許が必要な人もいます。地域性もあると思います。ここは気をつけてとアドバイスはできるが最終的に返納するかどうかの判断は本人次第です」

交通安全などに詳しい専門家は、免許更新の判断基準に「運転技能」を加えるべきと指摘します。

九州大学　大学院システム情報科学研究院　志堂寺和則教授
「きちっとドライバーがどのくらい運転できるか確認をして、一定の基準以下の人でも、そのままスルーで免許を更新する現在のシステムは問題が多いです。高い年齢層の人から制限をしていく、厳しくしていく、同時に若い人にも自分が年をとったらそうなるとメッセージを出すことも大事です」

新たな仕組み作りが求められる中、免許返納をサポートする企業が福岡にあります。

セーフライド　山内紗衣社長
「免許返納を高齢者にしてもらうサービスです。免許返納をした後も快適な生活につなげるサポートもしています」

家族の代わりに説得したり、車を使わない生活を提案したりするサービスを提供しています。もともと病院に勤めていた山内さん。交通事故で病院に通う患者を見て、免許返納をサポートする会社を立ち上げました。すぐ免許返納を促すのではなく、車のない生活を実際に体験することで返納後の生活をイメージできるといいます。

「１カ月車のない生活を送る事で、車がなくても意外に生活でき、自治体にこんなサービスがあったと気づきを得られます」

交通手段のアドバイスだけでなく買い物支援のサービスを提供するなどそれぞれに適したライフスタイルを提案したいといいます。

「準備をしてから運転卒業、免許返納してもらうのが一番いいと思います」

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