拘禁刑の導入　再犯を減らすための新たな取り組みとは？｜ニュース｜テレQ

拘禁刑の導入　再犯を減らすための新たな取り組みとは？

2025/06/11 (水) 16:30

裁判のニュースなどで耳にしてきた「懲役刑」や刑務作業がない「禁錮刑」という刑罰が、６月から「拘禁刑」という刑罰に一本化されました。刑務所での作業を義務とせず受刑者の高齢化など１人１人の特性に合わせた対応を行おうというものです。再犯の防止に向けた新しい取り組みを取材しました。

九州最大規模の刑務所、　福岡刑務所。約７３０人が収容されています。

あるスペースでは、軽快な音楽に合わせ、主に６５歳以上の高齢受刑者たちが体を動かしていました。月に３回、健康運動指導士が訪れ足腰を中心に運動を指導します。

健康運動指導士
「出所後の生活をイメージして、自分で健康作りをしてもらえるように簡単な種目を選んでいます」

高齢受刑者が出所後も健康を維持しながら生活できるよう、拘禁刑の導入を踏まえて取り入れられたものです。「生きづらさ」を感じて再び罪を犯す人も少なくなく、受刑者１人１人に合わせた処遇や支援が課題となっていました。

刑務所などの受刑者数は減少傾向にある中、再犯者が占める割合は５割を超え高止まりしています。

福岡刑務所　上席統括矯正処遇官　西尾純平さん
「高齢や障害があるなど受刑者の特性に応じて処遇内容を検討し、社会復帰支援の観点から言えば釈放後の課題を洗い出し、療育手帳の取得など必要な福祉的支援を行っています」

これまでの刑罰では、無銭飲食をした高齢のＡさんも、窃盗をした知的障害のあるＢさんも懲役刑として、刑務作業が中心でした。ただ拘禁刑の導入で、受刑者は特性に応じて２４のグループに分けられました。刑務作業に加え高齢のＡさんには健康維持を目的とした運動を、知的障害のあるＢさんには福祉作業所で働くための就労支援などそれぞれに必要な取り組みを実施します。

刑務官「最近はどうですか？」
Ａさん（仮名）
「仮面接をしてあとは放免を待つばかりです。出所に近づいていると思います」

数カ月後に出所を予定する　Ａさんが受けているのは「対話」と呼ばれる取り組みです。受刑者が自由に話す場を作ることで、刑務官も受刑者の特性を知ること機会になります。刑務所生活は２度目のＡさん。発達障害があり、出所後は福祉作業所で働く予定です。

Ａさん（仮名）
Ｑ．「対話」を受けてみてはどうですか
「人との会話が大事なんでしょうが、何を話したら良いのか悩んみました。工場で何
があった、面接があったのを少しずつ話したら自分のことを少し理解してくれているのではないかと思います」

ただ、新しい取り組みへの対応は刑務所側に課題を投げかけています。

福岡刑務所　上席統括矯正処遇官　西尾純平さん
「改善更生について法律に明記されたことでより一層個々の受刑者の特性に応じた処遇を行うことが重要になります。改善指導に関する職員のスキルアップや職員のマンパワー不足が懸念される」

拘禁刑の導入について、元法務省官僚で矯正施設の実情に詳しい龍谷大学の浜井教授に尋ねました。

龍谷大学　浜井浩一教授
「受刑者の待遇改善のために行っているのではく、（刑務所内で）社会に戻って就労したときの環境に慣れるようでないとダメだよねというのが目的です。拘禁刑によって再犯率が下がる、社会が刑務所のあり方を理解して応援するようになります。刑務官の社会的地位が高まるのが大事です」

久留米市で５月に開かれた出所者の雇用に関心がある企業を対象にしたセミナー。雇用協力主として登壇した北斗工業の北崎　勝繁社長です。１２年前、行政や保護司から頼まれ出所者を受け入れました。

北崎社長
「（雇うことで）私や従業員の物がなくならないかなど考えましたが、警察ＯＢの保護司から『あなたが雇ってあげないとどうなるか分からない』と言われたのが決め手」

北崎社長はそれ以来、出所者を受け入れ、今も８人が働いています。その１人、Ｂさんです。

Ｂさん（仮名）
Ｑ．勤めて何年くらいですか
「７年ぐらいです」
Ｑ．どのような罪を犯したんですか？
「人をだました。詐欺。（お金をだまし取っていた？）はい」
「再犯して昔に戻ると裏切りになるので、少しでも会社に貢献したいです」
北崎社長
「彼は今では中心人物です」

北崎社長は親や友人以上に寄り添い、その思いも彼らに伝わっています。

Ｃさん（１０代）
Ｑ．社長はどんな人ですか
「優しいです。捕まったときに見捨てないでいてくれました。幸せです」

そんな北崎社長が見せてくれたのは来月受け入れが決まっている少年が少年院から送ってきた手紙です。

北崎社長
「彼は一度私を裏切って退職して辞めました。また悪い事をして少年院にいます」

手紙の内容
『親も兄弟もおじさんもおばさんも面会に来ないので、社長が来てくれて今の生活を頑張ろうと思いました』

北崎社長
「ありがたい言葉でもあります。もうすぐ出てくるので受け入れて上げようそれくらいしか考えていないです」