盗難被害のスイートコーン農家が車中泊で防犯｜ニュース｜テレQ

盗難被害のスイートコーン農家が車中泊で防犯

2025/06/05 (木) 16:30

福岡県内最大の農業地帯、久留米市にある人気の道の駅です。こちらでは、いまが出荷の最盛期というスイートコーン専用の売り場が設けられています。旬が短い特産とあって、遠方からも多くの買い物客が訪れていました。

記者
「きょうはどこから来ましたか？」

客
「福岡市内です」

記者
「じゃあ結構時間かけてこられましたね」

客
「おいしいですよね。甘くて。生でも食べられる。新鮮だから」
「北九州から、２時間かけて。甘いですね。外れがない」

遠くからでも足を運びたくなる今だけの味。今週末にかけ、より多くのコーンが並び売り場が賑わう見通しです。

久留米では５０戸ほどの農家が冬もの野菜を収穫した後の畑でスイートコーンを栽培。旨味をぎゅっと凝縮した焼きトウモロコシや、コーンの優しい甘みが染み出た炊き込みご飯もまさに旬の味覚です。久留米市の農家、野村勝浩さん。２０年にわたりスイートコーンを栽培しています。２０２５年は春先の天候不順で少し小ぶりですが例年通り甘みが強く、味は良いと言います。

スイートコーン農家　野村勝浩さん
「甘いですね。味はグッド」

日の出とともに収穫をはじめ、終わるのは夕暮れ頃。出荷に必要な作業も家族総出でこなしています。そんな野村さんですが、実は、日が暮れた後にも、やらないといけないことがあるというのです。それはすっかり夜が更けた深夜。コーン畑に、車がやってきました。乗っていたのは野村さんです。

記者
「この時間に、こちらに来られた理由は？」

スイートコーン農家　野村勝浩さん
「夜警です。２０２４年に盗難にあいましたので、２０２５年は作物を守ろうと思いまして。見回りに来まして、畑で車中泊をしながら作物を守っています。」

野村さんの農園では２０２４年、収穫直前だったスイートコーンおよそ５００本が、侵入した何者かに盗まれました。

記者
「ご自身で車中泊をして、警備をするということ？」

スイートコーン農家　野村勝浩さん
「そうです。人にあまり任せられんし、やはり納得がいかんので」

頼れる人もおらず、個人で被害を防ぐほかないといいます。抑止の手段として、防犯カメラという選択肢もありますが。

「じゃあ防犯カメラで犯人が捕まるかというと、私は無理だと思うし、（高額な）設置費用を考えると取られた方が安いです」

カメラや電気を引くための設備に数十万円払うのなら、泣き寝入りもやむを得ないというのです。農作物の窃盗事件は、わかっているだけで年間２０００件あまり発生しており、農林水産省の調べではこのうち９割が未解決。道の駅に出荷するこちらの方も。

記者　　　　　　
「盗難被害ってあるんですか？」

農家の女性
「ありますよ夜中とかにね。自分で収穫していたら、どこまで採ったか分かるでしょ。それが翌日に行ったら、作物がなかったりします。それがやっぱり、悔しいですね」

そして、野村さんが車中泊までして防犯に取り組む理由は今週末に控える対面販売のイベントにあります。

スイートコーン農家　野村勝浩さん
「生活者に対面販売することで、去年おいしかったよと言っていただく唯一の楽し
み。子供たちの笑顔をいただく。また来年もがんばらないかんなと」

丹精込めたコーンを、どうにか無事に出荷する。見回りは夜通し続き、野村さんが帰路についたのはもう夜明け前でした。午前５時すぎのコーン畑。父のバトンを受けた息子の明弘さんが出荷する分の収穫を急ぎます。と、そこになんと。

記者
「野村さん、さっき１時間前に帰るって言って帰られたけどもう来ましたか。」

スイートコーン農家　野村勝浩さん
「もう仕事ですから」

仮眠さえとっていなさそうな野村さん。黙々と収穫にあたります。この日は盗難の被害にはあわず、無事、道の駅くるめに新鮮なコーンを出荷できました。ところが。

スイートコーン農家　野村勝浩さん
「これ、やられている」

記者
「これは害獣？」

スイートコーン農家　野村勝浩さん
「害獣に侵入してきてやられた」

久留米市の農作物の害獣被害は年間およそ４４００万円に上ります。このほか、肥料代も数年前に比べ２倍ほどに高騰するなど、生産者はあらゆる苦難と戦っているのです。

スイートコーン農家　野村勝浩さん
「作ったものを、皆様に食べてもらいたいと思って私たちは作っている。しかし、私たちの苦労もわかってもらえないといけない」

野村さんの見回りは、対面販売イベントを行う８日ごろまで続く見通しです。

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