縮小するミシン市場 メーカーの生き残り戦略

2025/10/10 (金) 16:30

8月、大阪・関西万博。


「すごいなぁ」

持ち上げたこの機械で…

山崎社長
「こんな感じで上から直接、立体物に縫える」

たしかに、しっかり縫えています。

「サドルが破れたりしたら、上からダダダと縫って治すとか、今まで出来なかったけど、この技術があればできるようになる」

その名も「MIRAIミシン」。作ったのは、「アックスヤマザキ」。その本社は、大阪市・生野区にあります。従業員19人の家庭用ミシンメーカー。先ほどの「MIRAIミシン」、どういう仕組み?

「下糸の代わりにタグを使って縫合する『タグステッチ工法』という技術」

縦に連なったプラスチック製のタグ。その1つ1つがT字型になっています。このタグを糸と共に打ち込むと、T字の部分が生地に引っかかり、糸が固定されるという仕組み。縫った裏側を見るとタグがびっしり。元は、自動車の内装をステッチで飾る、トヨタ車体の特許技術。それを消費者にも活用してもらおうと、無償供与されたんです。2026年の発売を目指し、「縫いの強度」を高める開発を進めます。

「日曜大工のように、電動工具のような感じで使っていただきたい」

もともとサラリーマンだった山崎社長、跡継ぎとして会社に入った2005年頃、会社は利益がほとんど出ていませんでした。当時は大手メーカーの受託製造が中心で、
元々利益率が低かった、市場の縮小が直撃したのです。新たな市場の開拓に、参考にしたのは、市場調査より“目の前の一人のニーズ」でした。娘やママ友など、身近な人に、とことんヒアリング。

「小学校の時にミシン習って難しくて、『もうあれで苦手になって…』と。そこをなんとかもう一段二段下げたものを作れば子供に楽しんでもらえるんじゃないか。どういう背景があって、その言葉を発しているのか?そういうのを感じとる」

そうして得たアイデアから生まれたのが、「毛糸ミシンHug」。上から糸を、ぐるっとひっかけるだけ。下糸もいらない簡単さで、発売2カ月で2万台を売る大ヒットに。

日経記者の目
「山崎社長は、大勢を対象とした市場調査ではなく、身近な一人の人物を徹底的に掘り下げることで、潜在的なニーズを炙り出し、まったく新しいマーケットを開拓しました。これが小さなメーカーが、大手と競合せずにヒットを生んだ秘訣だと思う」

さらに、必要な機能に絞ってコンパクトにした「子育てにちょうどいいミシン」は、
15万台以上を売り上げるベストセラーに。他にも、レザーなど厚地が縫えるミシンなど、新たな需要を呼び起こす製品を次々開発。かつての赤字は解消し、利益が出る体質になりました。

山崎社長
「自分で作る喜びや感動、ぬくもりは、やっぱり買って味わえるものではないので、
この文化をミシンメーカーの端くれとして、使命感を持って広めていきたいなと思っていて、結果、一家に一台の世の中にできたらいい」

この記事をシェア

最新のニュース

  • テレQ|テレQ ニュースPLUS
  • テレQ投稿BOX
  • アナウンサーズ公式Xはこちら
  • テレビ東京|[WBS]ワールドビジネスサテライト
  • テレビ東京|Newsモーニングサテライト
  • テレビ東京|昼サテ
  • テレビ東京|ゆうがたサテライト