ネーミングライツ「施設の名前が変わるだけ?」

2024/05/08 (水) 16:30

4月、お馴染みの施設の名称変更が突如発表されました。「みずほペイペイドーム福岡」。みずほフィナンシャルグループとペイペイによる連名でのネーミングライツ契約はプロ野球の1軍本拠地では初めてということです。

街の声
「新鮮でかっこいいと思った」

街の声
「最初(ペイペイドーム)のほうが好き。急にみずほってついたのがなぜか分からない」

突然の名称変更に戸惑いの声も聞かれましたが、今回のケースのように施設に企業やサービスの名前を命名できる権利を「ネーミングライツ」といいます。

「ベススタ」で知られるサッカーJ1・アビスパ福岡の本拠地「ベスト電器スタジアム」はネーミングライツで2020年からこの名称になりました。ただ、今では施設以外にも導入が広がっているようです。

記者
「ありました。見て下さい、キャナルシティ祇園町西交差点歩道橋と書いています」

そう、歩道橋にも「ネーミングライツ」。そして中間市が管理する道路は、その名も「ピザクック通り」。契約料は5年間で330万円です。道路や施設を所有する自治体にとって維持・管理の財源確保につながるためネーミングライツはメリットが大きいといわれています。

福岡県 財政活用課 大塚俊雄係長
「アクシオン福岡、ももちパレス、春日公園の野球場の4施設の公募を進めている」

福岡県は4月、年間40万人以上が利用するアクシオン福岡など所有する4つの施設にネーミングライツを導入すると発表。施設によって異なりますが企業が提案する最低金額は、年間202万から500万まで。6月19日まで募集し2024年9月からの契約を目指しています。

アクシオン福岡で契約が決まった場合、利用者にはどんなメリットがあるのでしょうか?

福岡県 財政活用課 大塚俊雄係長
「こちらはプール利用者の休憩室になっている」

子どもから高齢者まで年間10万人が利用するというプール。

福岡県 財政活用課 大塚俊雄係長
「厨房があるが、現状は使っていない。別の形で活用ができないかと考えている。
あくまで案だが、授乳室やキッズコーナーを整備するなどを検討している」

他にも、研修室の壊れた机を買い換えることも案に盛りこんでいます。

福岡県 財政活用課 大塚俊雄係長
「利用者の利便性、快適性を高めるような取り組みをネーミングライツで得られた収入を活用してしていきたい」

一方、北九州市ではちょっと変わったネーミングライツを2022年から導入しています。

北九州市 市政変革推進室 安徳 一紀次長
「従来型であれば行政が施設を指定して募集する。民間の事業者から声をかけてもらい市内の施設にネーミングライツの事業者になりたいと受け付ける制度」

そう、言うならば「提案型ネーミングライツ」。行政側が選んだ施設の命名権を募るのではなく企業側から名前を付けたい公共施設を提案してもらう仕組みです。この「提案型」は横浜市や仙台市も取り入れているといいます。

北九州市 市政変革推進室 安徳 一紀次長
「提案を待つことによって事業者のいろんな発想や視点で、この制度がより広がると思った」

企業側にとっては年間100万円から、3年以上の契約が条件となるこの制度。市が公開したリストには体育館や野球場、図書館など100を超える施設が対象となっていました。

こちらは、北九州市八幡西区の本城陸上競技場。製鉄には欠かせない「耐火物」の製造を手がける大手メーカー「黒崎播磨」が去年年間400万円でネーミングライツを取得しました。

現在は「黒崎播磨陸上競技場in HONJO」という愛称になっています。「提案型ネーミングライツ」に応募した理由について担当者は。

黒崎播磨担当者
「弊社は陸上部を持っていて、地元の競技場に貢献したい」

市にとっては財源を芝生のメンテナンスなどの費用に充てることが可能になった一方で「提案型」の課題も見えてきたといいます。

北九州市 市政変革推進室 安徳 一紀次長
「施設に対するいろんな思いのある市民の人、金額の妥当性の合意をもらうのが一番難しく課題」

北九州市の運送業者、ヤマックス。市の「提案型ネーミングライツ」に応募したものの実現することはできませんでした。

ヤマックス 山田雄二社長
「響ホールのネーミングライツに立候補しました」

ヤマックスが応募したのは30年以上の歴史がある北九州市八幡東区の響ホール。九州交響楽団など多くのオーケストラが音色を奏でてきた場所です。

ヤマックス 山田雄二社長
「当社が学校関係の吹奏楽部やプロオーケストラの九州交響楽団など、楽器運搬をメインに運んでいる。そこ(響ホール)にヤマックスの名前を付けたいと思った。仮に「ヤマックス響ホール」という名前になると、学生や保護者に知名度が広がる。将来的にはリクルートにつながればいい」

会社の知名度を上げるため応募したものの一部の市民から反対意見が出たといいます。

市民の声(HPより)
「命名権料が100万円からというのは低すぎる」
「響ホールの宣伝効果は、100万円程度のものであるとは思えない」

さらに最低金額や契約期間などの条件が見直しになったため辞退せざるを得ない結果となりました。

ヤマックス 山田雄二社長
「ネーミングライツの契約期間が(本来は)3年だった。しかし1年の更新に変わった。看板は弊社が設置しないといけない。投資費用と考えると1年更新では費用対効果が厳しいと思い見送った」

市民の声を受け条件変更を求められた北九州市。現在「提案型ネーミングライツ」の見直しに着手しています。そもそもなぜこのようなことが起きたのか?ネーミングライツに詳しい専門家はある問題を指摘します。

鳴門教育大学 畠山輝雄 准教授
「行政の独断である程度ネーミングライツの導入やその契約要項が決めていけるということが1番問題だと思っています。公共施設は税金が多く使われている施設なので、少なくとも住民の代表である議会議員。つまり議会での合意形成ってのはしていく方向にするべき」

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