博多和牛が三重苦 農家の本音は?

2025/05/20 (火) 16:30[2025/05/20 (火) 18:18 更新]

コメ不足は県内の畜産業にも影響を与えています。福岡県の畜産農家が育てる博多和牛。全国でも高い評価を受けていますが、その博多和牛が今、ピンチなんです。一体何が起きているのでしょうか。

こちらは福岡市西区にある堀ちゃん牧場今宿駅前店。精肉を販売したり、博多和牛を使ったランチを提供したりしています。また、堀ちゃん牧場は博多和牛の肥育農家で、生産から販売まで一貫して行っています。博多和牛はやわらかい肉質と濃厚なうまみが特徴ですが、それを支えてきたウシの餌の価格が高止まりを続けているのです。

堀ちゃん牧場 堀田和秀社長
「これが1トン9万円、1頭が博多和牛になるのに5トン食べます。(出荷までに)50万円近くの餌代がかかります」

博多和牛の餌となるトウモロコシなどを含んだ配合飼料は、その大半をアメリカから輸入していて、以前は1頭当たり30万円ほどだったということですが、円安などの影響で今年は50万円に値上がりしました。こうした為替の影響を和らげるため、博多和牛の飼育で行ってきたのが輸入飼料以外に福岡県で取れた稲わらやコメを食べさせることでした。博多和牛販売促進協議会によりますと、こうした県内の飼料を使う努力で、1頭当たりの生産コストはブランドを立ち上げた20年前から変わらず抑えられてきたといいます。しかし2024年から2025年にかけ、コメ不足が畜産農家を直撃しました。

「本当はまだいっぱい入ってる時期ですが、これだけしかありません。(去年は1.5トンも)900キロしかないというのが現状です」

このコメ、全て堀ちゃん牧場の田んぼで自家栽培した物ですが、2024年の夏、高温が続き、2024年の収穫量は3割減少しました。コメが減り、輸入飼料が増えたため、博多和牛の飼育コストは上昇。一方、コメの価格が高い状況を受け、堀ちゃん牧場では、コメを食用として売ることに力を入れることを決めました。

「今年は作付けを増やして、(食用の)コメを作る面積を増やそうとやっています」

減反していた水田や未活用の土地を耕作し、2025年は作付面積を拡大。食用米の生産を3割ほど増やす計画です。また、物価高による節約志向が強まったことも堀ちゃん牧場にとっては逆風です。総務省が発表した2024年の家計調査報告によりますと、2人以上の世帯が消費に使った金額は実質で前の年に比べて1.1%減少しました。前の年を下回るのは2年連続で、総務省は物価高の中で節約の傾向が現れているとしています。

福岡の和牛の卸売価格は2025年に持ち直したものの、コロナ前の水準には戻っておらず、値上げは容易ではないと言います。。

「安い物、安い物と言われてもある程度の価格がないと生活ができません。価格が少し上昇しても食べていただきたい」

牛肉の価格も輸入する飼料も為替が大きく関わっており、アメリカのトランプ大統領が打ち出す関税政策、いわゆるトランプ関税により、今後どうなるのか、先行きは依然不透明です。

「大変厳しい状況ですが、稲わらとか牧草とか自分たちができること、種をまいて収穫する。外国に頼らず生産費を落とす努力をする」
「いい牛を作ってみなさんに喜んでいただければと思います」

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