乳牛や豚が猛暑で“夏バテ” 対策は限界 生育や繁殖に影響

2025/08/07 (木) 16:30

連日の厳しい暑さで夏バテする牛や豚が増えていて、福岡でも畜産の現場が対応に追われています。

筑前町にある永利牧場。約100頭の乳牛を飼育しています。

木戸優雅アナウンサー
「失礼します。日陰に入るので少し涼しいですが、それでも、モワっとしていますね」

この時期牛舎内の温度は、35℃を超える日がたびたびあり、乳牛にも異変が起きています。

永利牧場 近藤博昭牧場長
「お腹の辺りの上下する感じが、これが激しいとより一層牛が夏バテをしている状況」

連日の暑さで食欲が落ち、搾乳の量も減少。乳牛1頭から取れる搾乳量は、例年1日30リットルですが…

近藤さん
「ピーク時で言うと3割落ちた時もありました。ここ数日涼しくなっても1割は落ちているので、まだ回復はしていないとは感じています」

暑さ対策として10年ほど前に導入したのが、天井付近に設置されている大型扇風機とミスト。大型の扇風機は24時間回していて、ミストの稼働時間は午前7時から午後7時までと、例年より4時間伸ばしました。さらに、牛同士の感覚をあけ牛舎内の密度を下げています。それでも暑さに耐えられず、今年に入り2頭の乳牛が流産。乳房炎という病気が治らず、食用肉になった乳牛もいると言います。

近藤さん
「自分たちがやれる限界でやってはいる。あとはもうバテている牛がいたら個体で水をかけたりして体温を下げてやるのが精いっぱいなところですかね」

永利牛乳は1942年に牧場経営をスタート。今年で83年になります。現在は学校給食用に1日14万個の牛乳を製造していて、福岡都市圏や筑豊地区に住む子どもたちには馴染み深い牛乳です。この給食用が売り上げの8割を占め収益の柱になっていますが、今かつてないほど光熱費や餌代が高騰し、経営に大きな痛手となっています。そこで長谷川専務は、個人経営の酪農家を守るためにも牛乳を適正価格に引き上げるべきと危機感を募らせます。

永利牛乳 長谷川章子専務
「牛乳の価値を(消費者に)認めてもらって、価格もこのぐらいなら我慢できるよねとか、このぐらいはお願いしたいというのを理解してもらわないと(経営は)難しい。やっていけないということになりますよね」

猛暑の影響は養豚場にも。

井上ピッグファーム 井上博幸社長
「暑くて昼間は餌を食べないんで。夏バテしますね」

豚は、人のように汗をかいて体温を調節することができないため暑さに弱い動物です。井上さんの豚舎では約9000頭の豚を飼育し、生まれてから半年ほどで出荷しています。しかしこの夏は夏バテしてうまく餌を食べることができず、通常より小さいまま出荷せざるを得ないそうです。もうひとつ深刻な事態が。

井上さん
「去年の夏場の種付けがうまくいってないので、今出荷する子豚が生まれていない」

豚は気温が高いと受胎する率が下がり、繁殖がうまくいきません。つまり去年の猛暑が要因で、全国的に今年の豚の数が減っていると言います。影響はすでに消費者にも。東京で取引される豚肉の卸売り価格は5月から上昇しています。7月18日には、1キロ948円と統計を取り始めた1990年以降で最高値を記録しました。毎年のように厳しい暑さに見舞われる中、井上さんの養豚場では水の気化熱を利用した2つの対策を続けています。

井上さん
「ここで2分間ミストが出て、4分半休む(止まる)ようにしています」

1つ目はミスト。細かいミストを一定間隔で噴射することで、豚舎の温度を下げます。さらに。

井上さん
「これクーリングパドって言って水を出して段ボールみたいなのに染み込ませて、そこから空気を入れる」

クーリングパドは、専用のパッドに水を流しそこを通る空気を冷やすもので、豚舎に涼しい風を送っています。

記者
「内側に入ってくると涼しいですね」

この装置はエアコンに比べると導入費用が安く、豚舎の中は27℃ほどに保たれています。しかしフル稼働させているため、電気代は6月も7月も月に200万円を超えたそうです。餌の価格も高止まりしていて、まさにダブルパンチです。

井上さん
「この気候が続くと養豚業者も廃業せざるを得ない人が出てくるんじゃないかな」

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