【筑後川の鵜飼い】今年も開幕 「豊漁」に期待高まる

2025/05/21 (水) 16:30

朝倉市の筑後川。20日、その河川敷で開かれていたのは「川開き」の神事です。本格的な夏の到来を前に関係者らが川の安全と繁栄を祈願しました。川開きとなり、解禁されたのが1300年以上続く日本の伝統漁「鵜飼い」です。「鵜飼い」とは飼いならした鳥「鵜」にアユなどの川魚を捕らせる漁のこと。福岡では「筑後川の鵜飼い」として親しまれてきました。

鵜匠 臼井信郎さん
「やっと漁(鵜飼い)が始まるので楽しみです」

筑後川で20年以上鵜飼いを続ける臼井さん。待ちに待った漁の解禁に胸を躍らせていました。そんな臼井さん。2024年、取材した際には、2羽だった相棒が20日、小屋を見せてもらうと2羽の新入りの姿が。合わせて4羽に増えていました。

「新しい鵜連れてきて客の前に出して鵜飼いをしていきたいです」

とはいえ、まだまだ訓練中。

「まだ新人は外には出せません。暴れてしまうからです」

シーズン終了となる9月までにデビューさせたい思いです。新たな相棒を仲間に加え生き生きとした表情の臼井さんでしたが。

「本当は漁として鵜飼いをしていきたいが、本当に魚が減って厳しいです」

吐露したのは「不安」の声。実は「筑後川の鵜飼い」は近年、存続が危ぶまれるほどの危機に陥っているのです。

「8年前の豪雨で川が変わってしまいました」

2017年、2023年と2度にわたり朝倉地区を襲った豪雨。降り続いた雨で川に山の土砂が流れ込み底にたまりました。鵜飼いで捕る アユなどの川魚は川底の岩につくコケをエサとしますが岩の上まで土砂が積もったことでエサ不足に。それにより
アユは以前の10分の1にまで減ったといいます。その結果、「漁」としての鵜飼いは継続困難に。2017年の豪雨の後3軒あった鵜匠のうち1軒は廃業しました。それでも「伝統継承」のため、今は「観光業」としての鵜飼いに力を入れています。

「気持ち的には“漁師”でいたいが、やっぱり鵜が仕事してこうやって魚捕りするんだとみてもらうのが一番です」

客にたくさんの魚を捕ってくる相棒たちの姿を見せるため、川開きの神事では「豊漁」を願いました。そして今年は「豊漁」を期待させるデータも。2024年のこの時期に、観測された下流から上ってくるアユの稚魚は約3万匹だったのに対し2025年はその10倍超えの約34万匹。2024年、大雨が少なかったことや、国による土砂の除去が進んだことが 理由とみられています。期待を胸に。いよいよ「初夏の風物詩」の幕開けです。通常は夜の開催ですが20日は開始初日ということで明るい時間帯に関係者に向けて披露しました。関係者が乗る屋形船の前に臼井さんが登場。もう一軒の鵜匠が飼っている鵜と「合わせて6羽」を操ります。間近で見る「鵜飼い」に関係者たちもくぎ付け。30分ほど披露し初日の鵜飼いが終了しました。結果は、捕獲が難しい明るい時間帯ということもあり、アユをくわえた鵜はいませんでした。それでも。

「鵜が一生懸命潜ってくれて良かったです。2025年はまだ漁が始まったばかりです。今からどれくらい魚が捕れるか楽しみです」

多くの課題を抱えながら、光も差し始めた、筑後川の鵜飼い。岐路に差し掛かりながらも2025年もまた、筑後川に初夏の訪れを告げています。

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